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KOYU筆ペン教室--美しい文字を書くお手伝い--ゆっくり流れるひと時をお楽しみください

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明朝体のことを少し

 図書館の新刊の中に、「日本語活字ものがたり」(小宮山博史/聖文堂新光社)という本を見つけました。<明朝体>のことを知りたかったので、丁度おもしろく読んだところでした。そこで、掻い摘んで9月9日のお教室で皆さんにお話をしました。以下はその内容です。

 活版印刷での<明朝体>の登場は、キリスト教の伝道のために、漢字聖書や布教小冊子を大量に印刷する必要性と深く関係しています。8世紀に中国人の手でなされていた木版印刷の<明朝体>は、鋳造法と高い印刷技術を持ったヨーロッパ人の手で工業製品としての金属活字となります。なぜ、<明朝体>だったかというと、縦線は太く、横線は細くて<うろこ>と呼ばれる三角形のある特徴が、当時アルファベットで主流だった<ローマン体>と似ていたからだそうです。

 美しい姿の明朝体は、篇と旁のバランス、上下のバランスの組み合わせの方法、鋳造法などの発達により作られていきます。本の中にはなんだか歪な<明朝体>が出てきます。(皆さんにも見ていただきました) 

 日本の近代印刷の<明朝体>は上海の美華書館という印刷所から、ウィリアム・ギャンブルを本木昌造が招聘した時から始まります。1858年のことです。

 その後、弘道軒という印刷所の依頼で、書家の小室樵山(1842~1893)が揮もうして、<弘道軒清朝体>が作られています。実は、このすぐ後に、築地活版が同じように楷書体の版下を書かせて、一悶着あるのですが、そのことについて本の中で、このようにふれています。「人びとが言葉に出さないにしても長い間親しんだ毛筆手書き文字への愛着があり、その活字化としての楷書体を欲していることを強く感じていたと思われます。」

 フォントの王様(と私は思っています)の<明朝体>にこんなに歴史があったことにびっくりして、またまた興味も増しました。本の中には、形の違う<明朝体>を見ることもできますし、カタカナ、連綿文字も登場します。
     (資料:「日本語活字ものがたり」/小宮山博史/聖文堂新光社)
by sumi-moji | 2009-09-10 21:30 | ◇書◇の豆知識